好評講座、『季節の抹茶茶碗絵付け』の初夏バージョンです。
今回は夏の朝を清々しく彩る朝顔図案を描きます。
素地は、この時期にふさわしい平形の茶碗を用意しました。
京焼きを意識して、やわらかい白色が魅力の「仁清」土をロクロで引き、木灰系の透明釉を掛けて酸化焼成しました。
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第3回 和絵具を使って描く抹茶茶碗【色絵朝顔文茶碗】の制作 2004/ 08/ 05/ Thu. |
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@使用する素地
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今回も九谷系の和絵具を用いて描きます。
使用する道具、素地の下拵えについては【制作の流れ:第2回】をご参照下さい。平形の茶碗なので内側が主の画面となります。 |
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A下図

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B素地に図案を転写する
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下図をトレーシングペーパーに写したものを素地にあてがい、トレーサー(鉄筆)でなぞり転写します。 |
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C転写終了

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D花弁の色盛り
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京風を意識して骨描き(縁取りの線描き)は行いません。やや広めのパートの色盛りは手早く行います。
色は素地との相性を考えると、ピンク、紫、青などに白盛りを混ぜた乳白がかった色が合うでしょう。 |
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E花弁の色盛り終了

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F葉脈の掻き落とし
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同様に葉の色盛りも行います。色は青味の緑、黄緑の2色を用いました。葉脈はスクレーパー(針でも可)による掻き落とし技法で表現しました。
花弁のトーンを考えると薄めに盛ったほうが良いでしょう。 |
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G葉の色盛り終了

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H金彩
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花心は、橙味がかった茶で引き締め、茎は洋絵具の濃茶を使いました。花弁の間に金彩を施し華やかさも添えます。
さあ、いよいよ焼成です。焼き上がりが楽しみですね! |
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I花心・茎・金彩終了

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J完成図
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骨描きを行わない図案でしたので色彩のコントラストが重要となりました。あらかじめ色彩計画をしっかり立てることが大切です。盛り絵具の扱いに慣れていない方は、洋絵具を用いてステンシル技法などで描いても良いでしょう。その場合素地とのなじみを考えると色の彩度は抑え目にしましょう。
工夫次第で様々な図案に応用できますので、皆さんも是非制作して見てください。 |
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K拡大図

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技法の補足 |
●素地のバリエーション:
今回は酸化焼成でクリーム色の素地に描きましたが、還元焼成で灰色の素地に描いても良いでしょう。この場合、花の色は紫や水色が良く合います。
●「色盛り」ここがポイント!:
今回のようなやや広い面の色盛りは、輪郭線に沿って筆をすばやく運び、内側に広げて盛っていくと良いでしょう。ひとつの色面を盛ったら水分がある程度蒸発するまで傾けずに水平を維持してください。水分が偏って蒸発して、盛り上がりが不均一になると焼成後の発色にも影響が出ます。
●掻き落としについて:
古い京都の色絵陶器を見ると、葉の表現に有田焼きのような黒い縁取りがないものを多く目にします。葉脈や葉の輪郭を金彩で描いたり、今回のように色を盛った後に掻き落として表現していたようです。あまり乱暴に引っ掻くと、ボロッと大きく剥がれてしまうこともあるので慎重に行ってください。スクレーパーは小型の切り出し刀のようなものなので「掻く」というよりは「彫る」ような意識で使えます。 |
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